抗不安薬の種類と注意点|薬剤師が解説
最終更新日: 2026-05-21
📋 この記事のポイント
  • ✓ 抗不安薬にはベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系があり、それぞれ特徴が異なります。
  • ✓ ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、依存性や離脱症状のリスクから、短期的な使用が推奨されます。
  • ✓ 薬物療法だけでなく、認知行動療法などの非薬物療法との併用も重要です。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。

抗不安薬は、不安や緊張を和らげるために用いられる薬剤の総称です。様々な種類があり、それぞれ作用機序や効果、副作用に違いがあります。患者さまの状態や不安の種類に応じて適切な薬剤が選択されますが、その使用にはいくつかの注意点が存在します。

デパス(エチゾラム)とは?効果・副作用・依存性について

抗不安薬デパス(エチゾラム)の錠剤と効能、副作用、依存性に関する説明
デパスの錠剤と効果・注意点

デパス(一般名:エチゾラム)は、ベンゾジアゼピン系に分類される抗不安薬の一つで、不安や緊張、不眠の改善に広く用いられてきました。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬
脳内のGABAA受容体に作用し、神経の興奮を抑えることで、不安や緊張を和らげる薬剤の総称です。即効性があり、効果を実感しやすい特徴があります。

デパス(エチゾラム)の作用機序と効果

エチゾラムは、脳内の神経伝達物質であるGABA(γ-アミノ酪酸)の働きを強めることで、過剰な神経活動を抑制し、不安や緊張を軽減します。具体的には、GABAA受容体に結合し、GABAの作用を増強することで、鎮静、催眠、抗不安、筋弛緩、抗けいれん作用を発揮します。そのため、不安障害、パニック障害、心身症に伴う不安・緊張・抑うつ、不眠症、頸椎症や腰痛症による筋緊張の緩和など、幅広い症状に対して処方されることがあります。

当薬局では、心身症で処方された患者さまから「服用すると気持ちが落ち着いて、夜も眠れるようになった」というフィードバックをいただくことが多いです。しかし、効果の感じ方には個人差があるため、服用量やタイミングは医師の指示に従うことが重要です。

デパス(エチゾラム)の主な副作用と注意点

エチゾラムの主な副作用としては、眠気、ふらつき、倦怠感、集中力低下などが挙げられます[1]。特に高齢の患者さまでは、ふらつきによる転倒のリスクが高まるため、注意が必要です[1]。当薬局の服薬指導では、高齢の患者さまには「特に夜間トイレに行く際など、足元に十分注意してください」と具体的なアドバイスをしています。

また、長期連用により依存性や離脱症状のリスクがあることが知られています[3]。急な服用中止は、不安の増強、不眠、手の震え、吐き気などの離脱症状を引き起こす可能性があるため、自己判断での中止は避けるべきです。減量や中止が必要な場合は、医師と相談しながら段階的に行うことが大切です。

⚠️ 注意点

デパス(エチゾラム)は、2016年より向精神薬に指定され、処方日数の制限や厳格な管理が求められるようになりました。これは依存性や乱用のリスクを考慮したものです。

抗不安薬の長期服用リスクと代替療法は?

抗不安薬、特にベンゾジアゼピン系薬剤の長期服用は、様々なリスクを伴うことが指摘されており、適切な管理と代替療法の検討が重要です。

長期服用に伴う主なリスク

ベンゾジアゼピン系抗不安薬の長期服用は、以下のようなリスクを高める可能性があります。

  • 依存性・耐性形成: 長期間服用を続けると、薬が効きにくくなる「耐性」が生じ、同じ効果を得るためにより多くの量を必要とするようになることがあります。また、身体的・精神的な依存が形成され、薬を減らしたり中止したりすると離脱症状が現れることがあります[3]
  • 認知機能の低下: 記憶力や集中力の低下、判断力の鈍化など、認知機能に影響を及ぼす可能性が指摘されています[1]。特に高齢者では、認知症のリスクを高める可能性も示唆されています。
  • 転倒・骨折のリスク増加: 眠気やふらつきといった副作用は、特に高齢者において転倒や骨折のリスクを高めることが報告されています[1]
  • 日中の眠気・倦怠感: 翌日まで薬の効果が残り、日中に眠気やだるさを感じることがあります。これは日常生活や仕事のパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。

服薬指導の際に、患者さまから「『この薬を飲まないと不安でいられない』と不安を訴える方が多い」という相談を受けることがよくあります。このような場合、依存の可能性も考慮し、医師と連携して減量や他の治療法への移行を検討することが重要です。

抗不安薬の減量・中止の進め方

抗不安薬の減量や中止は、自己判断で行うと離脱症状が強く現れる可能性があるため、必ず医師の指導のもと、段階的に進める必要があります。一般的には、数週間から数ヶ月かけて徐々に量を減らしていく「漸減法」が用いられます。当薬局の調剤経験では、患者さまの体調や生活状況を考慮し、医師と相談の上、服用量を細かく調整するケースを多く見てきました。

薬物療法以外の代替療法・非薬物療法

抗不安薬の長期服用リスクを回避するため、あるいは薬物療法と並行して、以下のような非薬物療法が推奨されます。

  • 認知行動療法 (CBT): 不安を引き起こす考え方や行動パターンに働きかけ、より適応的なものに変えていく心理療法です。不安障害の治療において、薬物療法と同等あるいはそれ以上の効果が期待できるとされています[2]不安障害の薬物療法と認知行動療法の併用
  • 生活習慣の改善: 十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動、カフェインやアルコールの摂取制限などが、不安症状の軽減に役立つことがあります。
  • リラクゼーション法: 深呼吸、瞑想、ヨガ、マインドフルネスなどは、心身の緊張を和らげ、不安を軽減するのに有効です。

これらの代替療法は、薬物療法と組み合わせることで、より効果的な不安症状の管理につながることが期待されます。

セロトニン系抗不安薬(タンドスピロン)の特徴とは?

セロトニン系抗不安薬タンドスピロンの作用機序と特徴を示す図解
タンドスピロンの作用機序

セロトニン系抗不安薬は、ベンゾジアゼピン系とは異なる作用機序を持つ抗不安薬で、特にタンドスピロン(商品名:セディール)が代表的です。ベンゾジアゼピン系の依存性や眠気といった副作用が懸念される場合に、選択肢の一つとして検討されます。

タンドスピロンの作用機序と効果

タンドスピロンは、脳内のセロトニン5-HT1A受容体に選択的に作用し、セロトニンの働きを調整することで、抗不安作用を発揮します。セロトニンは、気分や感情、睡眠などに関わる神経伝達物質であり、そのバランスが崩れると不安や抑うつ症状が現れやすくなると考えられています。

タンドスピロンは、ベンゾジアゼピン系薬剤と比較して、即効性は劣るものの、依存性や離脱症状のリスクが低いという特徴があります。また、眠気やふらつきといった中枢神経系の副作用も少ない傾向にあります。そのため、長期的な不安症状の管理や、ベンゾジアゼピン系薬剤からの切り替え、または併用療法として用いられることがあります。

当薬局では、タンドスピロンを服用中の患者さまから、「ゆっくりと効いてくる感じがする」「眠くならずに不安が和らぐ」というフィードバックをいただくことが多いです。効果を実感するまでに時間がかかる場合があるため、根気強く服用を続けることが大切です。

タンドスピロンの主な副作用と注意点

タンドスピロンの主な副作用としては、吐き気、食欲不振、めまい、頭痛などが報告されています。これらの副作用は比較的軽度であることが多く、服用を続けるうちに軽減することも少なくありません。重篤な副作用は稀ですが、何か気になる症状が現れた場合は、速やかに医師や薬剤師に相談してください。

また、タンドスピロンはベンゾジアゼピン系薬剤とは異なり、筋弛緩作用や催眠作用はほとんどありません。そのため、不眠が主症状である場合には、単独での効果は限定的である可能性があります。他の薬剤との併用や、睡眠衛生の指導なども合わせて検討されることがあります。

項目ベンゾジアゼピン系抗不安薬(例: エチゾラム)セロトニン系抗不安薬(例: タンドスピロン)
作用機序GABAA受容体作用増強セロトニン5-HT1A受容体作用
即効性高い低い(効果発現まで数日~数週間)
依存性・離脱症状リスク高い低い
主な副作用眠気、ふらつき、倦怠感、集中力低下吐き気、めまい、頭痛
長期使用の適性短期使用が推奨長期使用も可能

不安障害の薬物療法と認知行動療法の併用は効果的?

不安障害の治療では、薬物療法と非薬物療法、特に認知行動療法(CBT)を併用することで、より高い治療効果が期待できるとされています。

薬物療法と認知行動療法の相乗効果

薬物療法は、不安症状を比較的速やかに軽減し、患者さまが日常生活を送る上での苦痛を和らげる効果が期待できます。特に急性期の強い不安症状に対しては、薬物療法が有効な選択肢となります。しかし、薬物療法だけでは、不安を引き起こす根本的な思考パターンや行動様式を改善することは難しい場合があります。

ここで認知行動療法が重要な役割を果たします。認知行動療法は、患者さま自身の考え方(認知)や行動に焦点を当て、不安を軽減するための具体的なスキルを習得する心理療法です。例えば、パニック発作を恐れて特定の場所を避ける行動(広場恐怖)や、完璧主義的な思考パターンなどが不安を悪化させている場合に、それらを認識し、より建設的な考え方や行動へと変えていくことを目指します。

服薬指導の際に、患者さまから「薬を飲んでも、根本的な不安が消えない」という声をいただくことがあります。このような場合、認知行動療法を併用することで、薬の効果で症状が落ち着いた状態で、より積極的にCBTに取り組むことができ、相乗効果が期待できます。薬で症状が安定することで、CBTで習得したスキルを実践しやすくなるというメリットもあります。複数の研究において、薬物療法と認知行動療法の併用が、単独療法よりも優れた治療効果を示すことが報告されています[2]

併用療法の具体的な進め方

併用療法では、まず薬物療法で不安症状をある程度コントロールし、患者さまが認知行動療法に取り組める状態を整えることが一般的です。その後、認知行動療法を開始し、不安のメカニズムを理解し、不安に対する対処法を身につけていきます。CBTのセッションが進むにつれて、患者さまの不安が軽減され、自己対処能力が高まるにつれて、医師の判断のもと、薬の減量や中止を検討していくことになります。

当薬局の調剤経験では、薬物療法と並行してCBTを受けている患者さまは、治療の進捗が良好な傾向にあると感じています。特に、患者さまがCBTで学んだことを日々の生活で実践していると、薬の効果もより引き出されやすい印象です。治療期間中も、薬剤師として患者さまの服薬状況や副作用の有無、CBTの進捗などを定期的に確認し、医師と情報を共有することで、よりきめ細やかなサポートを提供できるよう努めています。

まとめ

様々な抗不安薬の種類と、それぞれの薬を安全に使用するための注意点
抗不安薬の種類と使用上の注意

抗不安薬には、ベンゾジアゼピン系とセロトニン系など、いくつかの種類があり、それぞれ作用機序や効果、副作用のプロファイルが異なります。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は即効性があり効果を実感しやすい一方で、依存性や認知機能低下、転倒などのリスクがあるため、短期的な使用や慎重な減量が求められます。一方、セロトニン系抗不安薬であるタンドスピロンは、効果発現までに時間がかかるものの、依存性や眠気のリスクが低いという特徴があります。

不安障害の治療においては、薬物療法だけでなく、認知行動療法などの非薬物療法との併用が有効であることが示されています。薬で症状を安定させながら、根本的な不安の対処法を身につけることで、より持続的な改善が期待できます。抗不安薬の服用にあたっては、医師や薬剤師とよく相談し、自身の症状や生活状況に合った適切な治療法を選択し、指示された用法・用量を守ることが何よりも重要です。

よくある質問(FAQ)

抗不安薬は、いつ服用するのが効果的ですか?
抗不安薬の種類や患者さまの症状によって服用タイミングは異なります。一般的に、不安が強い時や、就寝前に不安で眠れない場合に頓服として服用したり、症状を安定させるために毎日決まった時間に服用したりします。必ず医師の指示に従い、用法・用量を守って服用してください。
抗不安薬を服用中に飲酒しても大丈夫ですか?
抗不安薬とアルコールを併用すると、薬の作用が強く出すぎて、眠気やふらつき、集中力低下などの副作用が増強される可能性があります。また、呼吸抑制など重篤な副作用につながるリスクも高まります。安全のため、抗不安薬服用中の飲酒は避けることが強く推奨されます。
抗不安薬は、どのくらいの期間服用できますか?
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、依存性や耐性の問題から、可能な限り短期間の使用が推奨されます。症状が安定したら、医師の指導のもと徐々に減量し、中止を目指すのが一般的です。セロトニン系抗不安薬は比較的長期使用も可能ですが、いずれの場合も医師と相談しながら治療計画を進めることが重要です。
この記事の監修
💼
大城森生
管理薬剤師・旭薬局渋谷店
💼
佐藤義朗
薬剤師・有限会社旭商事 代表取締役
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