片頭痛薬の種類と使い分け|薬剤師が解説
最終更新日: 2026-05-22
📋 この記事のポイント
  • ✓ 片頭痛治療薬は発作時に使用する急性期治療薬と、発作を予防する予防薬に大別される。
  • ✓ トリプタン系薬剤は片頭痛の特異的な治療薬であり、早期の服用が効果的。
  • ✓ CGRP関連抗体薬は新しい予防薬として注目されており、従来の治療で効果不十分な場合に選択肢となる。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。

片頭痛は、日常生活に大きな支障をきたす頭痛の一種です。その治療には様々な種類の薬があり、症状や体質に合わせて適切に使い分けることが重要です。この記事では、片頭痛治療に用いられる薬の種類と、それぞれの特徴、そしてどのように使い分けるべきかについて、薬剤師の視点から詳しく解説します。

トリプタン系薬剤の種類と選び方

片頭痛治療に用いられるトリプタン系薬剤の成分と効果的な選択肢
トリプタン系薬剤の選択肢

トリプタン系薬剤とは、片頭痛の発作時に服用することで、痛みを和らげる効果が期待できる特異的な治療薬です。片頭痛の主な原因の一つである、脳の血管の拡張や炎症に関わる神経伝達物質「セロトニン」の受容体に作用し、血管を収縮させ、炎症を抑えることで頭痛を改善します[5]

トリプタン系薬剤の特徴と作用機序

トリプタン系薬剤は、セロトニン5-HT1B/1D受容体作動薬と呼ばれ、拡張した脳血管を収縮させ、痛みの伝達を抑制する作用があります。この作用機序により、片頭痛特有のズキズキとした痛みや吐き気などの随伴症状にも効果が期待できます。当薬局では、片頭痛の患者さまから「市販薬では効かないけれど、トリプタンを飲むと楽になる」というフィードバックをいただくことが多いです。

セロトニン5-HT1B/1D受容体作動薬
脳内の血管や神経に存在するセロトニン受容体の一種である5-HT1B/1D受容体に結合し、血管収縮作用や神経伝達抑制作用を示す薬剤の総称。片頭痛の特異的な治療薬として用いられる。

主なトリプタン系薬剤の種類と選び方のポイント

現在、日本で処方されるトリプタン系薬剤には、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタンなどがあります。これらは効果の発現時間、持続時間、剤形(錠剤、口腔内崩壊錠、点鼻薬、注射薬)、副作用の頻度などに違いがあります。

  • スマトリプタン(イミグラン®など): 効果発現が比較的速く、注射剤もあるため、吐き気が強い場合や即効性を求める場合に選択肢となります[5]
  • ゾルミトリプタン(ゾーミッグ®など): 錠剤と口腔内崩壊錠があり、水なしで服用できる利便性があります。
  • エレトリプタン(レルパックス®など): 効果が強く、持続時間も比較的長いとされています。
  • リザトリプタン(マクサルト®など): 効果発現が速いことが特徴です。
  • ナラトリプタン(アマージ®など): 効果発現はやや緩やかですが、効果の持続時間が長く、副作用が比較的少ない傾向があります。

どの薬剤を選ぶかは、頭痛の頻度、重症度、随伴症状、過去の治療歴、そして患者さまのライフスタイルによって異なります。服薬指導の際に、患者さまから「どの薬が一番効きますか?」と質問されることがよくあります。その際には、それぞれの薬剤の特性を説明し、患者さまご自身の頭痛パターンや過去の経験を詳しく伺いながら、医師と相談して最適な選択肢を見つけるようアドバイスしています。例えば、頭痛の予兆を感じたらすぐに服用できるタイプ、吐き気が強い場合に使いやすいタイプなど、個々の状況に応じた提案が可能です。

トリプタン系薬剤の注意点

トリプタン系薬剤は、片頭痛の発作が始まったらできるだけ早く服用することが効果的とされています。しかし、前兆期(閃輝暗点など)に服用すると効果がない、あるいはかえって悪化する可能性もあるため、頭痛が始まってから服用するよう指導されることが多いです。また、血管収縮作用があるため、狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患を持つ方、コントロール不良の高血圧の方には禁忌とされています。当薬局の調剤経験では、これらの既往歴を確認し、患者さまに合った用法をご案内しています。また、服用回数が増えすぎると薬物乱用頭痛のリスクが高まるため、月に10日以上の服用は避けるべきとされています。

⚠️ 注意点

トリプタン系薬剤は、頭痛が始まってから服用し、前兆期での服用は避けましょう。また、心血管疾患の既往がある場合は使用できません。必ず医師や薬剤師に相談してください。

CGRP関連抗体薬|片頭痛の新しい予防薬

CGRP関連抗体薬とは、片頭痛の発作頻度や重症度を軽減することを目的とした、比較的新しいタイプの片頭痛予防薬です。片頭痛の発症に深く関わるとされる神経伝達物質「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」の働きを阻害することで、片頭痛の発作を予防します[1]

CGRPとは?その作用機序

CGRPは、三叉神経節に豊富に存在するペプチドで、片頭痛発作時に放出されると、脳血管の拡張や炎症を引き起こし、痛みの発生に関与すると考えられています[1]。CGRP関連抗体薬は、このCGRPそのもの、あるいはCGRPが結合する受容体をブロックすることで、片頭痛の発症メカニズムに直接作用し、予防効果を発揮します。

CGRP関連抗体薬の種類と特徴

現在、日本で承認されているCGRP関連抗体薬には、エレヌマブ(アイモビーグ®)、ガルカネズマブ(エムガルティ®)、フレマネズマブ(アジョビ®)の3種類があります。これらは全て注射薬であり、患者さま自身または医療従事者が月に1回、または3ヶ月に1回皮下注射で投与します。

  • エレヌマブ(アイモビーグ®): CGRP受容体を標的とする抗体です。
  • ガルカネズマブ(エムガルティ®): CGRPリガンド(CGRPそのもの)を標的とする抗体です。
  • フレマネズマブ(アジョビ®): CGRPリガンドを標的とする抗体で、月1回または3ヶ月に1回の投与が選択可能です。

これらの薬剤は、従来の予防薬で効果が不十分であったり、副作用のために継続が困難であったりする患者さまにとって、新たな選択肢となり得ます。当薬局では、CGRP関連抗体薬を服用中の患者さまから、「頭痛の頻度が明らかに減った」「以前よりも日常生活が送りやすくなった」というフィードバックをいただくことが多いです。特に、慢性片頭痛(月に15日以上頭痛がある状態)の患者さまにおいて、著しい改善が見られるケースもあります。

CGRP関連抗体薬の対象患者と注意点

CGRP関連抗体薬は、主に月に4回以上の片頭痛発作があり、既存の予防薬で十分な効果が得られない患者さまが対象となります。服薬指導の際には、自己注射の手技指導を行うこともあり、患者さまが安心して治療を継続できるようサポートしています。注射部位反応(痛み、赤み、腫れ)や便秘などの副作用が報告されていますが、重篤な副作用は比較的少ないとされています[4]。ただし、長期的な安全性データはまだ蓄積途上であり、妊娠中や授乳中の安全性は確立されていません。調剤の現場では、患者さまが自己注射を適切に行えるか、副作用の兆候がないかなどを定期的に確認し、医師と連携して治療をサポートしています。

項目トリプタン系薬剤CGRP関連抗体薬
目的片頭痛発作時の痛み緩和(急性期治療薬)片頭痛発作の頻度・重症度軽減(予防薬)
作用機序セロトニン受容体作動薬、血管収縮・神経伝達抑制CGRPまたはその受容体を阻害
剤形錠剤、口腔内崩壊錠、点鼻薬、注射薬皮下注射薬
投与頻度頭痛発作時月1回または3ヶ月に1回
主な副作用胸部圧迫感、吐き気、めまい注射部位反応、便秘

頭痛薬の使いすぎによる薬物乱用頭痛とは

頭痛薬の過剰摂取が引き起こす薬物乱用頭痛のメカニズムと予防策
薬物乱用頭痛の解説

薬物乱用頭痛とは、頭痛薬を頻繁に使いすぎることによって、かえって頭痛が悪化したり、慢性化したりする状態を指します。これは、頭痛薬の過剰な使用が脳の痛みを調整するシステムに影響を与え、痛みに過敏になることで引き起こされると考えられています。

薬物乱用頭痛のメカニズムと診断基準

薬物乱用頭痛は、特に市販の鎮痛薬やトリプタン系薬剤を月に10日以上、または月に15日以上(薬剤の種類による)継続して3ヶ月以上服用している場合に発症リスクが高まります。これらの薬剤を乱用することで、脳内の痛覚閾値が低下し、軽い刺激でも頭痛を感じやすくなるという悪循環に陥ります。当薬局では、患者さまが「最近、頭痛の頻度が増えて、薬を飲む回数も増えた」と相談されることが多く、薬物乱用頭痛の可能性を考慮して服薬状況を詳しく確認するようにしています。

診断基準としては、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)において、特定の頭痛薬を一定期間以上乱用していること、および頭痛が月に15日以上存在し、薬物乱用を中止すると頭痛が改善することが挙げられます。

薬物乱用頭痛の予防と対処法

薬物乱用頭痛を予防するためには、頭痛薬の適切な使用頻度を守ることが最も重要です。市販の鎮痛薬であれば月に10日以内、トリプタン系薬剤も月に10日以内が目安とされています。服薬指導の際には、患者さまにこの目安を伝え、頭痛ダイアリーなどを活用して服薬回数を記録するよう勧めることもあります。

もし薬物乱用頭痛が疑われる場合は、自己判断で薬を中止するのではなく、必ず医師に相談してください。医師の指導のもと、段階的に薬を減らしたり、予防薬を導入したりするなど、適切な治療計画を立てる必要があります。離脱症状として一時的に頭痛が悪化することもありますが、医師や薬剤師のサポートを受けながら乗り越えることが大切です。当薬局では、薬物乱用頭痛の患者さまに対して、単に薬を減らすだけでなく、頭痛の誘因の特定や生活習慣の改善など、総合的なアプローチを提案し、患者さまが薬に頼りすぎない生活を送れるよう支援しています。

⚠️ 注意点

頭痛薬の使いすぎは、かえって頭痛を悪化させる薬物乱用頭痛につながる可能性があります。服薬回数には注意し、月に10日以上服用する場合は医師に相談しましょう。

緊張型頭痛と片頭痛の見分け方と薬の選び方

頭痛には様々な種類がありますが、特に一般的なのが片頭痛と緊張型頭痛です。これらは症状や原因が異なるため、適切な治療薬を選ぶためには、まず自身の頭痛がどちらのタイプなのかを見分けることが重要です。

片頭痛と緊張型頭痛の症状の違いとは?

片頭痛と緊張型頭痛は、それぞれ特徴的な症状を示します。以下に主な違いをまとめました。

  • 片頭痛: 脈打つような「ズキンズキン」とした痛みが特徴で、頭の片側または両側に現れることが多いです。光や音に過敏になり、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。体を動かすと痛みが悪化するため、日常生活に支障をきたしやすいです。
  • 緊張型頭痛: 頭全体が締め付けられるような「ギューッ」とした痛みが特徴です。首や肩のこりを伴うことが多く、ストレスや姿勢の悪さが原因となることが多いです。片頭痛のように光や音に過敏になったり、吐き気を伴ったりすることは稀です。

服薬指導の際、患者さまから「自分の頭痛がどちらか分からない」と相談されることがよくあります。その際には、痛みの性質、場所、随伴症状、悪化要因などを詳しく伺い、どちらの頭痛に近いかを判断するお手伝いをしています。例えば、「ズキンズキンしますか?」「吐き気はありますか?」といった具体的な質問をすることで、患者さま自身も頭痛の特徴を理解しやすくなります。

それぞれの頭痛に対する薬の選び方

頭痛の種類によって、効果的な薬は異なります。

  • 片頭痛の薬: 前述のトリプタン系薬剤が特異的な治療薬として用いられます。軽度から中等度の片頭痛であれば、イブプロフェン[6]やロキソプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も有効な場合があります。吐き気がある場合は、制吐剤を併用することもあります。
  • 緊張型頭痛の薬: アセトアミノフェンやNSAIDsなどの一般的な鎮痛薬が用いられます。筋弛緩薬や抗不安薬が処方されることもあります。根本的な改善には、ストレスの軽減、姿勢の改善、適度な運動などが重要です。

実際の処方パターンとして、片頭痛の患者さまにはトリプタン系薬剤とNSAIDsが併用されることが一般的です。例えば、トリプタンが効かない場合や、頭痛が軽度な場合にNSAIDsを使用するなど、状況に応じて使い分けます。また、慢性的な緊張型頭痛の患者さまには、鎮痛薬の乱用を防ぐため、予防的なアプローチとして生活習慣の改善指導も重要となります。

ボツリヌス毒素製剤による治療とは?

慢性片頭痛(月に15日以上の頭痛が3ヶ月以上続く状態)に対しては、ボツリヌス毒素製剤(ボトックス®)の注射が治療選択肢となる場合があります。ボツリヌス毒素は、神経伝達物質の放出を抑制することで、痛みの信号伝達を阻害し、片頭痛の頻度や重症度を軽減する効果が報告されています[2]。特に、薬物乱用頭痛を合併している慢性片頭痛の患者さまにも有効性が示されています[3]。この治療は、専門医によって行われるものであり、一般的な頭痛薬とは異なるアプローチです。

まとめ

片頭痛薬の種類と正しい使い分けのポイントを簡潔にまとめた表
片頭痛薬のまとめと使い分け

片頭痛の治療薬には、発作時に痛みを和らげる急性期治療薬と、発作の頻度や重症度を軽減する予防薬があります。急性期治療薬の代表はトリプタン系薬剤であり、片頭痛特有の症状に効果が期待できますが、心血管疾患を持つ方には禁忌であり、薬物乱用頭痛のリスクもあるため、適切な使用が重要です。新しい予防薬としてCGRP関連抗体薬が登場し、従来の治療で効果不十分な慢性片頭痛患者さまにとって有効な選択肢となっています。また、頭痛の種類(片頭痛か緊張型頭痛か)を正しく見分け、それぞれに適した薬を選ぶことが、効果的な頭痛管理の第一歩です。薬物乱用頭痛を避けるためにも、頭痛薬の適切な使用頻度を守り、自己判断せずに医師や薬剤師に相談しながら、ご自身の頭痛に合った治療法を見つけることが大切です。

よくある質問(FAQ)

片頭痛薬はいつ飲むのが最も効果的ですか?
片頭痛の急性期治療薬(トリプタン系薬剤など)は、頭痛が始まってからできるだけ早く服用することが効果的とされています。痛みが軽いうちに服用することで、より高い効果が期待できます。前兆期(閃輝暗点など)に服用すると効果がない、あるいはかえって悪化する可能性もあるため、頭痛が始まってから服用しましょう。
市販薬で片頭痛を治せますか?
軽度から中等度の片頭痛であれば、イブプロフェンやロキソプロフェンなどの市販の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が有効な場合があります。しかし、市販薬で効果が不十分な場合や、頭痛の頻度が多い場合は、医療機関を受診し、医師の診断のもとトリプタン系薬剤などの処方薬を検討することをお勧めします。市販薬の使いすぎは薬物乱用頭痛の原因となる可能性もあるため注意が必要です。
CGRP関連抗体薬はどのような人が対象になりますか?
CGRP関連抗体薬は、主に月に4回以上の片頭痛発作があり、従来の片頭痛予防薬で十分な効果が得られない患者さまや、副作用のために継続が困難な患者さまが対象となります。慢性片頭痛(月に15日以上の頭痛が3ヶ月以上続く状態)の患者さまにも有効性が期待されています。自己判断ではなく、医師と相談して適応を判断してもらう必要があります。
この記事の監修
💼
大城森生
管理薬剤師・旭薬局渋谷店
💼
佐藤義朗
薬剤師・有限会社旭商事 代表取締役
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